最近、とある新聞にてギリシャ人新鋭指揮者が取り上げられておりました。

その名も、テオドール・クルレンティス。名前からして何か神秘性を感じずにはいられませんね。その彼と彼が率いるオーケストラが来年初頭に東京・大阪へとコンサートに参ります。どんな指揮を振る舞うのかと拝聴したところ・・なんと、オーケストラの団員がチェロ奏者以外は全員、立ったまま演奏しているではありませんか。こんなオーケストラ観たことがない!

嵐の中、よろき蠢くヨットの帆のように揺れ動く弦楽奏者たちの頭。この身体全体を使いきった演奏を目にし、耳にし、私の心は芸術の在り方に奮い立ちました。彼いわく、工場労働者でもあるまいオーケストラ団員たちを何故に無理に統一する必要があるのか。むしろ、個々の個性をどう引き立たせるかが重要である。その結果、このような個人の意見を尊重しあうようなオーケストラ軍団に生まれ変わったのであります。ピアノの生徒たちにも頻繁に申してはいますが、音楽の最終段階での上手下手は、どれだけ練習してきたか、努力の有無にも寄りますが、最後は「情熱」で決まります。どれだけ、その楽器やその音楽を愛しているか。これはどんな仕事にも当てはまることだと私は思いますが、これを奏でたい!と思ったら、峠から身を投げる気で奏でてみてください。その音は必ず、誰かの心を掴むことでしょう。

バイリンガルピアノ教室では個々の個性を大事にしながらレッスンに励んでいるのも、私がみんな一緒だとつまらないと思っているからであります。そして私自身、単一的ないわゆるスタンダード演奏は嫌いだから。心の奥に立ち込める情熱という名の光を灯すお手伝いをしたいという思いで常にレッスンをしています。

きらきら星だって、こんなに盛大な音楽に一変わり~!この単調な旋律をオーケストラで演奏すると思って弾いてみたらどんな演奏にだって成り得ます。そう、楽器には類まれな想像力も必須です。そしたらないものもあるように見えてきて、聴こえてくるのです。

げんこつやまのたぬきさんだって負けませんよ!いくつになっても夢や希望。そしてワクワクした鼓動と共に生きていきましょう。人間年をとればみんな頑固になっていきます。自分の在り方にあれやこれと更に超えられない壁を増やしてもしょうがありません。いつだって音楽は心で楽しむものです。